藤田保健衛生大学 平成11年度一般入試問題*衛生学部
(50分、600字)
人間による環境破壊、環境汚染が地球規模で進む中、環境保全、資源節約のために、
あなた自身が実行できることについて述べなさい。

■ 解説
 環境問題は、現代を生きる我々には避けて通れない重要問題であり、だからこそ入試小論文
でももっとも多く出題されているテーマのひとつである。「地球温暖化」「酸性雨」「オゾン
・ホール」「ゴミの処理の問題」「環境ホルモン」「資源の枯渇」「森林の伐採」「生態系の
破壊」等、日々のニュースに環境問題が登場しない日はない。個々のこうしたニュースに注目
することとともに、この問題の特性を十分認識しておく必要がある。『現代用語の基礎知識』
(1999年版には環境特集あり)『イミダス』などの事典をながめておくことも有効である。


1.環境問題の根本原因は、現代の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会・経済システムにあること。
2.我々個人個人は消費者として加害者であり、同時に被害者であること。
3.「社会・経済システム」の変革と個人の「ライフ・スタイル」の変革といった生産・消費の両面
からの対応が必要であること。
4.これから近代的な社会構造へと変革しようとしている発展途上国と、大量生産・大量消費によって
豊かさを享受し、環境を破壊してきた先進国を同列に扱えるのかということ。

 解答例では、上記した1、2、3について述べている。
 設問の指定は「〜あなた自身が実行できることについて述べなさい」というものであるが、個々の
取り組みについて述べる前に、先ず環境問題において個人の自主的行動がいかなる位置にあるのかを
第一段落で確認してみた。
 第二段落は実行出来ることを具体的に述べている。その際、筆者はライフ・スタイルの変革を軸に、
二つの種類の行動を考えている。一つは微々たる効果しかないかも知れないが、環境に直接働きかける
ものであり、もう一つは消費行動によって、社会構造の変革を促すものである。漠然と事例を並べるの
ではなく、このように事例を分類して既述すると問題を整理できる。



■解答例

 現代の環境破壊、環境汚染、資源の枯渇等の環境問題は、大量生産と大量消費、大量廃棄を前提とする
現在の社会経済構造が生み出したものである。その本質的解決は、このような構造を問いなおし、地球環境
に負担の少ないものへと変革することでしか求めることは出来ない。この問題は社会の「システム全体」に
かかわる問題であり、個人の自主的行動には限界がある。国家的、国際的なプロジェクトとして取り組む必
要があるものである。  
しかし、この事は人まかせにしていてよいという事とは違う。資源やエネルギーを大量に消費する今の社会
を作り、その物質的豊かさを享受しているのは、他ならない私たち消費者であり、社会経済構造の変革には
個人のライフ・スタイルの変革が不可欠だからだ。
 具体的には、多少の利便性は犠牲にしても、無駄な消費をしないということに尽きるだろう。冷暖房の使
用をなるべく控えたり、自家用車の使用をなるべく控えることで、大気汚染や資源節約にも貢献できる。ま
た、本当に必要な物しか買わないとか、多少他の商品より値段が高くとも、環境への負担が少ない商品を買
うという消費行動によって、企業の商品開発に影響を与えることで、社会構造の変革を促す事も出来る。「
システム全体」の変革を求めるとともに、自身のライフ・スタイルを大量消費・大量廃棄に根ざした物質的
豊かさを追求するものから、環境との共生を目差すものへと変革する必要がある。
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